アデノウイルス感染症(プール熱)

アデノウイルス感染症(プール熱)とは

特徴

正式名称を咽頭結膜炎といい、プールを介して感染することが多いため、プール熱と呼ばれます。

ウイルス感染

アデノウイルスの特殊な型(主に3型で、他に4,7,11型など)ににより生じる伝染性疾患で、三大夏風邪(①ヘルパンギーナ ②手足口病 ③プール熱)の一つです。
感染力は強く、周囲へ感染が広がります。
一度感染したウイルスには免疫を獲得するため同じウイルスで再感染はしません。
しかし、プール熱を発症するアデノウイルスは何種類もあるため、一度プール熱に感染しても、別のアデノウイルスで再びプール熱になることもあります。

流行シーズン

プール熱には1年中感染する可能性がありますが、アデノウイルスは暑くて、湿度の高い環境を好むために、夏期に流行し易くなります。
毎年5月末ごろから増え始め、7、8月にピークを迎え、10月頃まで流行が見られます。

アデノウイルス 概要

種類が多い

プール熱を引き起こすアデノウイルスですが、現在約50もの種類があり、それぞれのウイルスの種類により、引き起こされる症状が少しづつ異なります。

様々な病態

アデノウイルス感染で引き起こされる病態は様々で、以下のようなものがあります。①上気道炎 ②咽頭炎 ③肺炎 ④咽頭結膜炎(プール熱) ⑤流行性角結膜炎⑥出血性膀胱炎 ⑦腸炎 などです。

感染

ウイルスの侵入

感染力は非常に強く、主な感染経路は飛沫感染と接触感染です。
唾液や鼻水、目ヤニや便にもウイルスが含まれるため、それらを介して、眼の結膜や鼻、口、喉の粘膜からウイルスが体内に侵入し感染します。

飛沫感染

唾液や気道分泌物により飛沫感染します。
咳やくしゃみが原因です。

接触感染

患者に触ることによる感染もあります。
ウイルスが付いている手で口や鼻を
触れることで、その部位の粘膜から体内に入り感染します。

プール消毒が不十分

水の消毒が不十分なプールに、何らかの理由でアデノウイルスが含まれると、プールの水を介して感染する可能性が有ります。

感染力ある期間

目、咽頭からは2週間、糞便からは3~4週間ウイルスが排出されますが、感染力が強いのは発症日から数日間です。

好発年齢

幼児期から小学生までに多い病気です。

症状

潜伏期間

潜伏期間は5~7日です。

特徴的症状

①喉の痛み、②結膜炎、③発熱の3つの症状が特徴です。
れらの症状が、3~5日間ほど続きます。
ただし、これら全ての症状が必ず現れるわけではないため、風邪や結膜炎などと見分けがつきにくい場合があります。

発熱

38度以上の高熱が3~7日間続きます。

結膜炎

充血、目の痛み、かゆみ、目やに、まぶしく感じる、涙が止まらないなどがあります。
一般的に、先ず片方の目に症状が現れ、その後、反対側の目にも同様の症状が現れます。

その他の症状

腹痛、下痢、リンパ節の腫れ、頭痛、咳、食欲不振、倦怠感などが現われることもあります。

診断

症状

特徴的な結膜炎、咽頭痛、発熱などの臨床症状と、流行期、年齢を総合的に考慮して診断します。

迅速診断キット

綿棒で喉やまぶたの裏側をこすって、アデノウイルスがふくまれているかを、診断キットで調べます。
所要時間は15分間程度です。

採血

血液学的診断は臨床的な意義は低く、プール熱の場合、臨床から比較的判断し易いことから、原因ウイルスの鑑定まで行う必要は無いと、考えられています。

合併症

予後一般

基本的には予後良好な病気で、合併症の出現は少ないとされています。

中耳炎

耳にウイルスが侵入すると、中耳炎を起こすことがあります。

副鼻腔炎

副鼻腔にウイルスが侵入すると、副鼻腔炎を起こすことがあります。

肺炎

稀に、重症化して肺炎を起こすことがあります。

アデノウイルス7型

アデノウイルス7型感染症の場合には、心肺機能に基礎疾患を持つ小児では、重症化の危険が高く、院内感染対策上重要です。

予防法

感染経路を断つ

感染者との接触を避けることはもちろん、感染者が触ったり使ったりしたものの扱いにも注意が必要です。

接触感染予防

手指の石鹸を使った洗い、消毒や、感染者の触れた物をさわらない注意が必要です。
目ヤニや涙はテイッシュで拭き、その都度処分します。
タオルの共有は感染の元です。
他の感染症と同様に感染防御には、日頃のうがい、手洗いが基本となります。

消毒

エタノールや次亜塩素酸ナトリウム消毒液で手すり、ドアノブ、おもちゃなど、日頃よく触れるところを消毒しましょう。

プールから出たら

プール熱はプールを通じて感染することが多いため、プールに入った後は、目や体をよく洗いましょう。

予防接種

未だ開発されていません。

治療

治療薬

特効薬はなく、症状に応じた薬の処方となります。
高熱に対しては解熱剤、喉の痛みに対しては抗炎症剤、目の症状に対しては、目薬を使うなどの対症療法が行われます。約1~2週間で回復します。

脱水

高熱が出る上に、喉の痛みや腫れで飲食がしづらい場合は、脱水症状にならぬよう、水分の補給を促します。
倦怠感が強い場合は、点滴にて補液します。

食事

食事は喉の刺激にならない、軟らかいものにするなど、食べやすい物を摂りましょう。

保育園・幼稚園の登園

保育園、幼稚園、小学校

学校保健安全法による規定では、出席停止期間は、『主要症状が消退した後2日を経過するまで。』と定められています。