ADHD(注意欠如・多動症)

ADHD(注意欠如・多動症)とは

注意欠如・多動症は、ADHDとも呼ばれており、発達障害の一つのタイプで、不注意、多動性、衝動性の3症状を主な特徴とする生まれつきの精神疾患です。
年齢あるいは発達に比べて注意力が足りない、衝動的で落ち着きがないといった特性があるために日常生活に支障を来たしている状況がみられます。

疫学

子供の有病率は5%で、男女比は2:1くらい。
成人の有病率は2.5%で、男女比は1.6:1くらいとされています。
女性は男性よりも、不注意の特徴を示す傾向があります。

発達障害とは

脳機能の発達に関係する障害により、社会性の障害、コミュニケーションの障害、想像力の障害があり、日常生活に支障のある状態です。
発達障害には、自閉症スペクトラム(ASD)、注意欠如・多動(ADHD)、学習障害(LD)、チック症(トウレット症候群)、発達性協調運動障害(DCD)、吃音などが含まれます。
同じ障害名でも、特性の現れ方が違ったり、他の発達障害や慢性疾患を、併せ持つこともあります。

症状

ADHDの主な症状は、うっかりミスが多いなどの不注意症状と、じっとしていることのできないなどの多動性・衝動性症状の2つに集約されます。

①不注意症状

  • 年齢に見合わない不注意さ、細かいことを見過ごしてしまう(ケアレスミス)
  • 簡単に気をそらされる。気が散りやすく整理整頓や時間の管理が困難
  • 物事を忘れてしまう
  • 授業や会話などに集中し続けることができない、話を集中して聞けない
  • 話しかけても聞いていない、上の空になりやすい
  • 好きな事以外注意を持続させるのが困難、気がちってしまう、作業が不正確
  • ミスや、無くし物、忘れ物が多い、約束を忘れてしまう
  • 課題や遊びなどを途中で止めてしまう。物事をやり遂げることができない
  • 一つの作業に集中し続けるのが難しい
  • その作業が楽しくないと、数分後にはすぐ退屈になる
  • 順序立てることや、整理整頓ができない
  • 勉強などコツコツやることを避けたり、イヤイヤ行う
  • しつこくて心配性、頑固で融通が利かない、あまのじゃく

②多動性・衝動性症状

  • 好きな事以外に対する集中力がほとんど無く関心や興味を示さない
  • 思いついたことをよく考えずに即座に行動に移してしまう
  • じっとしていることができない、注意を持続することが難しい
  • 授業中に席から離れる、指示は理解できても従うことが難しい
  • 落ち着かない、じっとしてられない、静かにできない、おしゃべりが過ぎる
  • 動きが多い、手足をそわそわ動かしている、順番を待てない
  • 突発的な言葉や行動が多い、急に走り出す
  • 衝動を抑えることが難しい、順番を待つことができない、順番を抜かす
  • ルールを守ることが難しい、列に並ばずに割り込みをしてしまう
  • 質問が終わる前に答えてしまう
  • 思った事を直ぐ口に出してしまい、うっかり失言もする
  • 結論無しにしゃべり続ける、他の人を遮ってしゃべる
  • 自分の話す順番を待つことができない
  • 絶え間なくしゃべる、黙ってじっとしてられない
  • イライラし易い、攻撃的、不吉な発想をする、愛想が無い
  • 思考がマイナス方向で悲観的、エネルギー不足
  • 怒りっぽい、いら立ち易い、感覚過敏、機嫌が悪い、反抗的

原因

ADHDの原因は、現時点では、はっきりとは解っていませんが、生まれつきの脳の何らかの機能異常が関係していると考えられています。
大脳の前頭葉の働きが生まれつき弱いことが関係しているという説が有力です。
生まれつきのものなので、発症には育て方、愛情の注ぎ方などの、後天的影響はありません。
遺伝が関係するとの見解もありますが、はっきりした結論は出ていません。

治療

①基本

ADHDの子供が、自分の特徴を理解し、状況にあった適切な行動をとれるようになることが目標です。
それには心理社会的治療と薬物治療が大きな要素となります。

②心理社会的治療

環境調整:子供の周囲の保護者や、保育園・幼稚園・学校の関係者がその特徴を理解し子供に適切な対応をできるようにします。
ペアトレーニング:保護者が子供の望ましい行動を増やし、望ましくない行動を減らすための接し方や方法を学びます。
ソーシャルスキルトレーニング:対人関係を良好に保つため、社会のマナーやルールを学びます。

③薬物療法

ADHD治療薬としては代表的な次の3種類があります。

  • コンサータ(一般名 メチルフェニデート塩酸塩)
  • ストラテラ(一般名 アトモキセチン塩酸塩)
  • インチュニブ(一般名 グアンファシン塩酸塩)

漢方薬にも有効なものがあります。
柴胡加竜骨牡蛎湯、抑肝散、甘麦大棗湯などが個々の症状に合わせて用いられています。