気管支喘息

気管支喘息とは

気管支喘息は空気の通り道である気管支の病気です。気管支を取り囲む平滑筋の収縮により気管支が狭くなったり、気道粘膜がむくんだり(浮腫)、気道内に分泌物すなわち痰が多く生じると、空気が通過しにくくなります。これらの気道の反応はわずかの刺激で起こり、気道過敏性の亢進と呼ばれます。
気道の過敏性が亢進することにより、発作性にゼイゼイやヒューヒュー(喘鳴)といった呼吸音がしたり、息が苦しい(呼吸困難)、胸が苦しい、咳がヒドイなどの症状が繰り返し見られます。それらの症状は自然に、もしくは治療により軽快・消失します。

症状

一般症状として、咳や痰、息苦しさ、ゼーゼーあるいはヒューヒューという喘鳴、胸の痛み、喉の違和感などを訴えます。
喘息症状の起こりやすい条件としては以下のものが有ります。
①夜間~早朝にかけての時間帯
②季節の変わり目など、気温差が激しいとき
③天気が良くない時、変わりやすいとき、低気圧接近時
④疲れているとき
⑤風邪をひいたとき
⑥発作を引き起こす刺激(タバコの煙、線香の煙、強い臭い)に触れたとき

疫学

男女比は、ほぼ1:1で同数ですが、重症の喘息死は男性に多いことが知られています。
成人の有病率は約3%です。

小児喘息

診断としては、喘鳴を3回以上繰り返した場合に診断されます。
すなわち、1回目の呼吸性喘鳴を認めた後、良くなって無症状の時期が1週間以上続いてから、同じような発作が、2回以上あれば小児喘息といえます。
発症年齢のピークは1~2歳です。発症年齢は、3歳までが70%、5歳までが90%を占めます。
小児喘息の約70%は思春期までに良くなります。小児喘息児ではアレルギー抗原はダニが最も高率です。

原因

喘息の人は気道が過敏になっており、わずかな刺激でも発作が起こります。
刺激となり喘息の誘因となるものは、一つでなく、それぞれの誘因が絡み合って発作が起こります。
主な誘因としては次のようなものがあります。
①アレルゲンの吸入: ダニ、ハウスダスト、ペットの毛・フケ、カビ(真菌)、花粉など
②タバコの煙
③薬:解熱剤、鎮痛剤など
④風邪、感染症
⑤過労、ストレス
⑥運動
⑦汚れた空気:排気ガス、光化学スモッグなど

予防

アレルゲンの把握

身の回りの自分のアレルギーの原因となるアレルゲンを減らすために掃除などの環境整備が大切です。そのためには採血検査を受けて自分の反応するアレルゲンを知りましょう。負担が少ない効率よい予防対策が立てやすくなります。

室内の環境整備

主な環境アレルゲンは、ダニ、カビ、ペットですので、屋内対策が重要です。
ダニは、ほこりや人のフケをえさとして繁殖するため、室内のほこりを溜めない工夫や、寝室・寝具の対策が大事です。また、ダニは湿気の高い場所も好むため、湿気対策も併せて行います。
①換気を十分に行う
②こまめに丁寧な掃除をする
③畳の部屋はフローリングにするのがベスト
④水槽は室内に置かない
⑤押し入れは定期的に空気を入れ替えする
⑥ぬいぐるみはよく洗濯する。できれば置かない
⑦布製ソファーは、革製やビニール製に変える
⑧カサのある照明の場合こまめに清掃し、ほこりを取り除く

検査

呼吸機能検査(スパイロメトリー)

息を、めいっぱい吸ってから、力いっぱい吐きだし、この間の空気の流れる量を測定します。喘息があると気道が狭くなっているため、息を吐くスピードが遅くなり、肺活量も少なめになります。

気道過敏性検査

発作を起こしやすくする薬を使用して、どのくらいの濃度で発作が起こるか測定します。喘息が重症なほど、気道過敏性が高くなります。

血液検査

どのアレルゲンに対してアレルギー反応が起こりやすいのかを確認する検査です。
アレルゲンに対する抗体価を測定し、アレルギー反応の強い物質を特定します。

皮膚反応テスト

アレルゲンエキスを皮膚につけて反応を見ます。

胸部レントゲン検査

喘息と同じような症状をもつ他の呼吸器疾患や、心臓疾患の判別や、肺炎の合併の有無を調べます。

診断

一般的診察

胸部の聴診に加え、病歴、家族歴の聴取と、必要であれば上記の検査によって診断します。

重症度を評価することにより治療法を考える目安となります

①軽症間欠型:症状が週1回未満、症状は軽度で短い、夜間症状は月に2回未満
②軽症持続型:症状が週1回以上だが毎日ではない、月1回以上日常生活や睡眠が妨げられる、夜間症状は月2回以上
③中程度持続型:症状が毎日、週1回以上日常生活や睡眠が妨げられる、しばしば増悪、夜間症状週1回以上
④重症持続型:症状が毎日、日常生活に制限、しばしば増悪、夜間症状しばしば

長引く咳が見らる気管支喘息以外の病気

せき喘息

アレルギーがある人に多い病気で、痰がほとんど出ないで、コンコンと乾いた咳が続きますが、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴や、呼吸困難は有りません。放置してそのままにしておくと、典型的な気管喘息に移行する確率が高くなります。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)

喫煙者もしくは過去にタバコを吸っていた人で、痰を伴う咳が長く続く場合、COPDの可能性が有ります。呼吸機能の低下により、せき、痰、階段や坂道の息切れが生じます。

心臓疾患

心臓喘息とも呼ばれ、虚血性心疾患、心臓弁膜症、心筋症、心不全など心臓の病気によって、発作性の呼吸困難が起こることが有ります。60歳以上の患者さんに多く見られます。

後鼻漏

アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などが原因で、鼻汁がのどの後ろに流れる状態で、むせるような咳が長く続きます。

胃食道逆流症

胃の内容物が逆流する病気で、胸やけや食道炎のほか慢性の咳の原因になります。

百日咳、マイコプラズマ肺炎

乾いた咳が数週間続きます。近年成人にも増加しています。

アトピー咳嗽

アレルギー性体質の人に起こります。ゼーゼーといった喘鳴は有りません。乾いた咳が続きます。

薬剤による咳

高血圧治療に用いられるアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE)によって、長引く咳が起こることが知られています。

運動誘発性喘息

喘息を持っている患者さんは、激しい運動をすることにより、一時的に喘鳴、息切れ、息切れ、呼吸困難といった症状が出てくることが有ります。このような現象を運動誘発性喘息といいます。運動の種類では、ランニング、マラソン、サッカーなど乾いた地面の上で行われるスポーツでよく見られます。
特に冬季の小児喘息患者の屋外運動では多く発生します。成人でも喘息患者の60~70%に見られます。

治療法

長期管理薬

①吸入ステロイド薬/長時間作動性β2刺激配合剤(吸入薬):1剤で気管支の炎症を抑える効果と、気管支を広げる効果が有ります。現在の気管支喘息治療の中心となりつつあります。
②吸入ステロイド薬(吸入薬):薬を吸い込んで直接肺まで届けることで炎症を抑えます。
③経口ステロイド薬(内服薬):全身性に働くステロイド薬で、炎症を抑える強い作用が有ります。副作用が色々有るので十分な注意が必要です。
④長時間作動性β2刺激薬(吸入薬):交感神経を刺激して気管支を広げる働きが有ります。長期管理薬として使う場合は、吸入ステロイド薬と併用します。
⑤長時間作動性β2刺激薬(貼り薬):1度貼ると効果が24時間持続するので、管理しやすく、特に小児に多く使用されます。
⑥ロイコトリエン受容体拮抗薬(内服薬):気管支を収縮させる作用に深く関係しているロイコトリエンという物質を、ブロックする働きが有ります。
⑦長時間作用性抗コリン薬(吸入薬):気管支の収縮を促すアセチルコリンの働きをブロックし、気管支の収縮を抑える働きが有ります。

喘息発作治療薬

①短時間作動性β2刺激薬(吸入薬)(内服薬):交感神経を刺激して気管支を広げる働きが有ります。
②テオフィリン薬(内服薬):気管支の緊張をとって、気管支を広げる働きが有ります。