クループ

クループとは

疾患の名前ではなく、感染症によって引き起こされる特定の呼吸症状の総称です。
喉頭の声帯付近が炎症を起こし、腫れるため、気道が狭くなり、呼吸時空気の流れが悪くなり、特有の咳や、呼吸困難が出現します。

症状

特有な咳

ケンケンというような、犬の吠える声に似た乾いた咳をしたり、オットセイが鳴くような感じの特有の咳をします。

呼吸困難

息を吸うことが上手くできないため、吸気時にゼイゼイします。気管支喘息は呼気時にゼイゼイしますのでその点が異なります。
泣いていても何時ものように泣き声が出ずに、鋭くヒーヒーという息が漏れるような音がします。

声がれ

声帯の炎症のために、声がかすれてしまいます。

陥没呼吸

呼吸困難時によく観察すると、鎖骨の上の凹んだ所や、胸の真ん中の上の凹みがぺコンペコンと息を吸う時に凹みます。

顔色不良

顔つきがとても苦しそうで、重症化すると、唇が紫色になります。(チアノーゼ)

原因

発症には以下のような原因があります。

ウイルス感染

クループ発症の原因で最も多いのがウイルス感染によるものです。
その中でも多数を占めるのが、パラインフルエンザウイルス1型・2型による喉頭気管気管支炎です。
他にも、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルスなどが原因と成り得ることが知られています。

声門浮腫

アレルギーにより喉頭の入口に浮腫(むくみ)が生じたものです。
痙性クループを発症し、頻度としてはウイルス感染の次に多く見られます。

インフルエンザ桿菌

インフルエンザ桿菌による喉頭蓋炎は、高熱と重篤な呼吸困難を伴い、急激な経過をたどります。

異物

ピーナッツなどの異物や腫瘍などによる機械的な閉塞でも発生します。

ウイルス性クループ

年齢

ほとんどが生後3ヶ月から6歳位までの幼児に見られます。
なかでも、多い年頃は1~2歳の幼児です。

症状

喉頭気管気管支炎を発症します。
数日前から微熱や軽微な風邪症状があり、引き続き、嗄声、犬吠様咳嗽、吸気性喘鳴が出現します。3~4日がピークで症状は夜間に悪化する傾向があります。

治療

ボスミンの吸入を行います。もし全く効果の無い場合は、急性喉頭蓋炎や細菌性気管支炎の存在を考えます。
ステロイド薬の内服や静脈注射も有効とされています。
呼吸困難が強い場合は、入院加療が必要で、時に、挿管が必要となることもあります。

痙性クループ

年齢

6ヶ月から3歳までに好発します。

原因

何らかのアレルギー素因を基礎に、ウイルス感染を契機に発症しますが、感染が無いにもかかわらず、発症することもあります。

症状

夜間に急に、喘鳴、犬吠様咳嗽などの症状が出現します。通常は数時間以内に軽快しますが、何回も同様の発作を繰り返すことが特徴です。
再発を繰り返しながら、5~6歳頃までに軽快することがほとんどです。

治療

ボスミンの吸入や、ステロイドの静注が有効です。
加湿や戸外の冷気などだけでも症状が改善することがあります。

急性喉頭蓋炎

年齢

2歳から6歳に好発します。

症状

先行する感冒様症状が無く、急激に発症し、急に呼吸困難が増強し、窒息死する危険性もあります。
初期には高熱、のどの痛み、咳が出現し、12時間以内に吸気性喘鳴が出現し、物を飲み込めなくなり、よだれが多量に出ます。やがて極めて重症な呼吸困難となり症状の急速な増悪により、死に至ることもあります。
大泣きや、興奮から呼吸停止を来たすことがありますので、患児の不安を軽減する努力が必要です。

治療

ボスミン吸入やステロイドの静注は効果が有りません。
抗生物質の投与が有効です。
呼吸状態に注意しながら、慎重に経過を観てゆく必要が有ります。
必要ならば、酸素吸入や挿管を行います。

細菌性気管支炎

年齢

1ヶ月から6歳の乳幼児に好発します。

症状

高熱、吸気性喘鳴、犬吠様咳嗽がみられ、初期にはウイルス性クループと似た症状です。物を飲み込む時に痛がります。
症状は急速に増悪することがあり、死に至る可能性もあります。

治療

ボスミン吸入やステロイドの静注は効果が有りません。
抗生物質の投与が有効です。
呼吸状態に注意しながら、慎重に経過を観てゆく必要が有ります。
必要ならば、酸素吸入や挿管を行います。

ジフテリア

真性クループ

ジフテリア菌によるクループを真性クループと呼び、ウイルスによるクループを仮性クループと呼んだ時代が有りました。
現在ジフテリアの発症が激減しておりほとんど見ることはないので仮性クループと言わずに単にクループと呼ぶことが多くなっています。

症状

嗄声、犬吠様咳嗽、吸気性喘鳴などの症状から始まり、やがて極めて強い呼吸困難が生じます。

発症数

現在、予防接種の普及により日本でのジフテリア発症は年間10例以下です。
4種予防接種が終了していない人は注意が必要です。

予防

生後2か月から通常18か月で4種混合ワクチンを接種します。

クループの診断

診察

診断は通常、臨床的に行われます。すなわち、生後6ヶ月~3歳の乳幼児が犬吠様咳嗽を発生し、胸部聴診上、吸気性喘鳴があり、夜間の増悪が有る場合、強く疑います。

レントゲン像

頸部および胸部のX線前後像で、喉頭蓋下の気道の狭小化が明らかなら、クループを示唆します。

内視鏡

乳幼児では操作が困難ですが、異物が疑われるなどの場合は、検査することもあります。