インフルエンザ予防接種

インフルエンザワクチン

冬季を中心に流行する季節性インフルエンザ予防のために接種するワクチンです。
インフルエンザ感染を防御、もしくは重症度を低下させることが期待できます。
厚生労働省は、「インフルエンザワクチンは、接種すればインフルエンザに絶対かからないというものではなく、ある程度の発病を阻止する効果が有り、たとえかかっても症状が重くなることを阻止する効果が有る」と広報しています。

インフルエンザワクチンの接種回数

13歳以上の方は、1回接種を原則としています。0.5ml 1回接種。
13歳未満の方は、2回接種です。
3歳以上13歳未満は、1回0.5ml 2回接種。
6ヶ月以上3歳未満は、1回0.25ml 2回接種。

インフルエンザワクチンを接種する時期、有効期間

インフルエンザワクチンの有効期間は約5か月です。
流行シーズンは例年、12月から3月にかけてですから、10月下旬から、12月上旬までの間に接種することが推奨されます。抗体価は通常、接種後2週間位から上がり始め、ピークは接種後1ヶ月前後といわれています。
すなわち接種すると2週間位で効果が現れ始めます。

インフルエンザワクチンに含まれる株

北半球においては、世界保健機構(WHO)により冬季インフルエンザ流行期に、推奨されるウイルス型・系統が発表され、それに基づいて、各製薬会社でワクチンが製造されてゆきます。2015/2016冬シーズンより、4つのウイルス型に対応する4価ワクチンとなっています。A型はH1N1、H3N2各々1種づつで、B型が2種類の構成です。(それ以前はA型2種、B型1種の3価ワクチンでした。)
近年のインフルエンザワクチン株は流行株とおおむね一致を示しています。また、仮に不一致だとしても、交差防御によって効果が期待されます。時に、北半球と南半球で若干株の異なるワクチンが使用されることもあります。

インフルエンザの発症予防効果

ワクチンを接種しても100%発症を予防できるわけではありません。
予防効果は、小児で25~60%、成人では50~60%とされています。

インフルエンザへの罹患リスクの高い人々

世界保健機構(WHO)およびアメリカ疾病予防管理センター(CDC)では特に、インフルエンザの罹患リスクの高い人々に対し、毎年のインフルエンザワクチンの接種を推奨しています。
高リスクグループには、妊娠中の女性、高齢者、6ヶ月から5歳の子供、健康問題を抱えている人、医療従事者が含まれています。

高齢者のワクチンの効果

アメリカ合衆国のデータでは、インフルエンザの死亡率が65歳以上の人では若年者に比べ、死亡率が10倍以上高いことが示されています。よって、高齢者は季節性インフルエンザに対し、最も脆弱なグループです。
にもかかわらず、ワクチン接種の効果が最も少ないグループであることが指摘されています。その最大の理由は、免疫機能の低下です。他に、高齢に伴う衰弱が原因に挙げられています。
とはいえ、65歳以上の高齢者接種で予防効果は34~55%で、死亡を抑制する効果は約82%であったという報告があり、接種が推奨されます。

妊婦へのワクチン接種

WHOはワクチン接種が推奨されるリスクグループの中で、妊婦が、最も推奨されるとしています。したがって、妊娠中であってもインフルエンザワクチン接種は可能です。妊婦接種による胎児への催奇形の誘導は認められません。妊娠のどの期間においても可能です。母体で獲得された抗体は、胎盤を介して胎児へも移行する上、その抗体は、出生後も約6ヶ月間持続するとされています。乳児へのインフルエンザワクチン接種は多くの場合、生後6ヶ月以降とされていますが、この空白期間を妊婦への接種によって補うことが可能です。母体への危険性としてインフルエンザワクチンによる母体の副反応や、アレルギーが挙げられますが、これらの発生頻度は妊娠の有無に関係ないとされます。ただし、経鼻スプレー型の生ワクチンの妊婦への接種は禁忌です。

1歳未満の乳児の接種

日本小児科学会の見解では、1歳未満接種は対象数が少なく、有効性を示す確証は認められなかったということです。
特に6ヶ月未満の乳児に関しては、十分な過去の経験が有りません。一方、1歳以上6歳未満の小児については接種の意義は認められました。

インフルエンザ脳症と小児へのワクチン接種

インフルエンザ脳症の発現率を減少させるかどうかについては 「インフルエンザ脳症の発症因子の解明と治療および予防方法の確立に関する研究」(森島恒雄)の成績では脳症患者とインフルエンザ罹患患者の間で、ワクチン接種率に有意差はみられなかったとされています。しかし、インフルエンザ脳症はインフルエンザ罹患者に発症する疾患であるところから、インフルエンザ罹患の可能性を減じるワクチン接種の意義は有るものと考えられています。

注射による副反応

インフルエンザワクチン接種により、副反応が発生する可能性がありますが、通常は軽微なものがほとんどです。具体的には、鼻水やのどの痛み注射部の腫れ、発赤などです。これらが数日間続くことが有ります。アレルギー反応を含む深刻な副作用を引き起こす可能性はありますが、確率は非常に低く、接種後の死亡例で、ワクチン接種との明白な因果関係を、立証されたものはないとされています。インフルエンザ感染による入院や、死亡などの危険と比較すると、インフルエンザ予防接種による一般的な副反応や危険性は、一時的で、かつ軽微なものに留まるといえます。

ギランバレー症候群

アメリカの報告では、接種100万回に1回の割合で、ギランバレー症候群が発生すると言われています。一方、中国では1000万回あたり1回という報告です。ギランバレー症候群は一般的には、咽頭発赤などの風邪症状が先行し、1~3週間後に下肢の筋力低下・麻痺が始まり、徐々に麻痺の範囲が広がってゆく神経疾患です。一部の患者では、呼吸筋が麻痺して、呼吸管理が必要となる場合もあります。インフルエンザワクチン接種の有効性は、接種後のギランバレー症候群の発生リスクを大きく上回るとされています。

インフルエンザワクチンの副反応でインフルエンザに感染する?

現在のインフルエンザワクチンは、インフルエンザの感染力を失わせ、免疫を作るのに必要な成分を取り出して作った、不活化ワクチンなので、ワクチンが原因でインフルエンザには感染しませんし、感染してしまったという報告もありません。

卵アレルギーとの関連

インフルエンザワクチンは、ニワトリの卵を使用して作られているため、接種者の卵アレルギーの有無にも注意しなくてはなりません。一般に、軽度の卵アレルギーの人にはワクチンが推奨され、重症の人には、ワクチン接種を慎重にすべきとされます。具体的には、卵への暴露後に蕁麻疹のみを発症した人は接種しても良い。卵でアナフィラキシーなど重度のアレルギー反応を起こしたことが有る人は、接種を見送るべきとされています。