更年期障害

更年期障害とは

更年期は閉経(1年間月経が無い)の前後約10年の期間をいいます。閉経の平均年齢が50.5歳ですので、大まかに45歳~55歳位の女性が相当します。卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)は20~30代でピークを迎えますが、40代に入ったところで急激に低下してゆきます。これに伴い、様々な身体的、精神的症状が現れますが、これらをまとめて更年期症状と呼んでいます。女性ホルモンの低下は全ての人に起こりますが全員が更年期症状を発症するわけではありません。一方、早い人は40代に入って直ぐに症状を自覚することもあります。更年期症状は、更年期障害とも呼ばれ、発症する背景は、心理的ストレスや性格的なものが強く影響し、大した症状を感じないまま過ぎる場合もあれば、日常生活に支障をきたすほど酷くなる場合も有ります。症状も千差万別で、重い人も軽い人も、さらにはあまり不調を感じない人もいます。

症状

更年期症状の最も頻度の多いものは(1)肩こり で頻度は約50%に及びます。その他多い順に(2)易疲労感(3)頭痛(4)のぼせ(5)腰痛(6)多汗(7)不眠(8)イライラ(9)皮膚掻痒感(10)動悸(11)気分が沈む(12)めまい(13)胃もたれ(14)皮膚粘膜乾燥感 が有ります。

個々の家庭状況や仕事場の環境が複雑に絡み合うために、症状は個人差が著しく、全身のあらゆる箇所に現れます。系統別に列記してゆくと次のようなものが見られます。

  • 精神神経系:頭痛、めまい、耳鳴、物忘れ、憂うつ、判断力・集中力の低下、不眠、不安感
  • 血管運動神経系:のぼせ、ほてり、発汗、冷え、動悸、息切れ
  • 皮膚・分泌系:皮膚粘膜の乾燥、発汗、湿疹、ドライマウス、ドライアイ
  • 消化器官系:食欲不振、吐き気、便秘、下痢、腹部膨満感
  • 運動器官系:肩こり、腰痛、背筋痛、関節痛
  • 泌尿器・生殖器系:月経異常、頻尿、残尿感、尿失禁、性器下垂感、外陰掻痒感

原因

卵巣から分泌される女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンは、20~30代で分泌のピークを迎えますが、40代に入ると急激に低下が始まります。この更年期の卵巣機能の急激な低下により、ホルモンバランスが狂い、自律神経が乱れ、体の環境変化に慣れるまでの期間、様々な症状が発現します。更年期の症状の発現には加齢やエストロゲンの欠乏といった身体的ストレスに加え、性格などから由来する心理的な要因、さらには仕事や家庭関係などの環境要因が重なって関与しています。各人の背景が異なるので症状にも差が出てきます。

きっかけとしては、家族、友人、知人の病気や死、そして自分自身の病気の発症などによる健康や加齢に対する不安も発症の原因となりえます。

予防

更年期障害は、症状や程度の差はあっても女性なら誰しもが経験することだといえます。

そのため、完全に予防することは難しいのですが、早めの対処で悪化を予防することは可能です。

先ずは、バランスの良い食事、適度な運動、十分な休養、自分なりのリフレッシュを生活に取り入れる工夫が必要です。この時期には生活習慣病やがんなどの病気も増えてきますから食生活、日常生活への配慮はこれらの病気の予防にもつながります。

検査

不定愁訴の訴えが有る場合は、血中エストラデイオール(E2)と下垂体ゴナドトロピンの卵胞刺激ホルモン(FSH)の濃度を測定し、E2が低値でFSHが高値の場合には更年期障害の可能性が有ります。

更年期障害の診断の基本はあくまで除外診断ですから、婦人科的疾患、内科的疾患の基本的検査は行います。

婦人科では上記のホルモン検査の他に、内診、子宮がん検診、超音波検査を行います。内科的には血圧測定から始まり、必要ならば心電図、胸部レントゲンさらには血液検査が行われ、脂質、糖質の状態を調べます。また、骨粗鬆症の検査をすることも有ります。

診断

先ずは十分な問診が必要です。現在の症状に加え、月経の状態や過去にかかった病気、さらには現在治療中の病気や内服薬の内容についても聞いてゆきます。また、家族構成や、親族の病気、生活環境、成育歴などについて必要な情報を得ます。これら情報と、上記の検査結果と併せ、慎重に診断してゆきます。

治療法

ホルモン補充療法(HRT)

体内で不足してきたエストロゲンを飲み薬や貼り薬として補充する療法です。エストロゲンだけを補充すると出血や、乳房の張りなどの不快な症状を伴いますので、これらを予防するためにプロゲステロン(黄体ホルモン)というもう一種の卵巣ホルモンを補充する必要があります。エストロゲンの補充により自律神経のバランスが整い、特に、ほてり、発汗、冷え、動悸などの血管系の不調やうつなどの神経症状の改善が期待されます。しかし、エストロゲン単独の長期投与では子宮がんのリスクが高まることが知られています。また、HRTは乳がん発症の危険性が有ると指摘する研究機関も有ります。また、静脈血栓塞栓症や脳梗塞のリスクについても提唱されています。

漢方薬治療

多彩な更年期障害に伴う症状の改善にまず用いられる治療法です。一般的には加味逍遙散が広く用いられていますが、他にも桂枝茯苓丸、当帰芍薬散、柴胡桂枝乾姜湯、湯温清飲、五積散、通導散、温経湯、三黄瀉心湯などが有り、症状に応じて使い分けられています。

神経症状の薬

うつ状態や、不安感、不眠などが前面に出て、主たる病状である場合は抗うつ剤や抗不安剤が使用されます。思いを吐き出すだけでも改善しますので、カウンセリングも有効な手段です。