骨粗鬆症

骨粗鬆症とは

骨量(骨密度)が減って、骨の強度が低下し、骨折し易くなる病気です。
WHOでは『骨粗鬆症は、低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患である』と定義しています。

骨の強さとは

骨の強さ(骨強度)は、骨量(骨密度)と骨の質(骨質)の2つで決まります。
骨は碁盤の目のような構造が立体的に重なってできあがっています。
この碁盤の目の詰まり具合が骨密度でであり、碁盤の目を作っている線の太さが骨質といえます。
両者の骨強度に対する関りは骨密度が70%、骨質が30%と言われています。
よって、骨強度に関しては骨密度の関わりが大きいため、骨粗鬆の判定には骨密度の計測が行われています。
骨質は、骨代謝回転や微細構造などにより規定されるものと考えられており、臨床的に評価をすることが困難なため、骨粗鬆症の診断には、骨密度が測定されることが多いのです。

骨密度と年齢

骨密度は年齢によって変化するもので、20歳くらいに最大となり、40歳半ばまでほぼ横ばいに推移します。そして50歳近くから減少しますが、女性は男性に比べると骨量(骨密度)の減る度合いが大きくなります。
これは、骨代謝(骨の新陳代謝)のバランスを調節している女性ホルモン(エストロゲン)が閉経を機に減少・欠乏することで起こります。
また、加齢によって骨密度が低下するのは、腸管でのカルシウムの吸収が悪くなったり、カルシウムの吸収を助けるビタミンDを作る働きが弱まるなどの理由があります。
さらに、若い頃に比べて、食事量や運動量が減るといった、生活習慣の変化も関係しています。骨は運動負荷がかかるほど、骨を造る細胞が活発になりますので、外出する機会が少なかったり、体を動かす習慣が無い人は骨が衰えやすいと言えます。

診断基準

脆弱性骨折の有無と骨密度を元に、骨粗鬆症の評価を行います。

脆弱性骨折 無し

① 正常   : 骨密度値が YAMの80%以上

      注) YAMは骨密度若年成人平均値(20~40歳)

② 骨量減少 : YAMの70%~80%未満

③ 骨粗鬆症 : YAMの70%未満

脆弱性骨折 有り

脊椎、大腿骨頸部、橈骨遠位端、その他に脆弱性骨折が有り、YAM80%未満は骨粗鬆症の判定です。

椎体骨折の症状

脊椎の椎体骨折を起こしている方は、3分の2が無症候性であることに注意が必要です。

骨密度の検査部位

原則、腰椎または大腿骨近位部の測定とします。
腰椎においてはL1~L4またはL2~L4を基準値とします。
これらの測定が困難な場合は橈骨、第二中手骨の骨密度とします。

検査

骨密度測定

骨の1平方センチにどれだけカルシウムやリンなどのミネラル成分が含まれているかを明らかにします。
骨密度測定は大きく分けて、X線を用いる方法と、超音波を用いる方法が有ります。

X線を用いる測定法

① DEXA法(二重エネルギー線X線吸収法)

骨に2種類のX線を当てて骨量を測ります。基本的に全身の骨を測ることができ、背骨や足の付け根、手首の骨などを測定部位とします。
検査の特徴としては、通常のレントゲン写真撮影に比べて被ばく量は少なく、各種骨量検査法の中では精度が高いという特徴があります。
測定は、腰椎と股関節の2か所です。
しかし、この装置を置いている病院は限られています。

② MD法

手のひらを、左手と右手の間にスロープ状のアルミニウム板がある台に載せてX線撮影し、第二中手骨とアルミニウムの濃度を比較して骨密度を測ります。
被ばく線量が少なく測定でき、一般的X線撮影装置で簡便に撮影できます。

定量的超音波測定法(QUS)

超音波が骨に伝わる速度などから骨密度を測定します。
測定部位は通常はかかとの骨ですが、すねの骨で測ることもあります。
短時間で簡便にでき、自治体が行う骨粗鬆症検査等で用いられるケースがみられます。
骨粗鬆症のスクリーニングにも用いられます。また、X線被ばくの心配が無いため妊婦さんでも測定可能です。

骨代謝マーカー

骨の状態を調べるために骨代謝マーカーを調べます。
この検査は骨粗鬆症かどうか診断するものではありませんが、骨粗鬆症の状態を調べたり、治療薬を選択したりするときや、薬物治療の効果を測る際にも活用されています。
骨代謝マーカーは骨代謝のバランスを調べるもので、血液や尿から測定されます。
骨代謝マーカーには以下の3種に大別されます。

① 骨形成マーカー
骨形成で中心的な働きをする骨芽細胞と呼ばれる細胞が作り出す物質です。
代表的なものに、OC(血清)、BAP(血清)、PINP(血清)があります。

② 骨吸収マーカー
骨吸収で中心的な働きをする破骨細胞と呼ばれる細胞が作りだす物質、もしくは破骨細胞が骨を破壊するときに作りだされる物質を測ります。
代表的なものに、NTX(尿)、TRACP(血清)、DPD(尿)があります。

③ 骨質マーカー
骨の強さには、骨密度だけでなく骨質も関係しています。
特にビタミンKの欠乏は骨質に悪影響を与えます。
その結果、ucOCという物質の血中濃度が上がります。

④ ビタミンD
ビタミンDは骨代謝マーカーではありませんが、骨の健康状況を調べる目的で、血中濃度が測定されます。項目は25(OH)Dです。
ビタミンDは、腸管におけるカルシウムの吸収を促進し、血中カルシウム濃度を維持し、骨のカルシウムを正常に保つ働きがあります。

症状

腰痛

腰や背中の痛みを発生することが多く、腰痛が有るために医療機関を受診して骨粗鬆症が判るという場合も少なくありません。
骨粗鬆症の発症初期は、痛みが出ず症状は有りません。症状が現れる時には、すでに骨粗鬆症が進行していることも珍しくありません。

猫背変形

脊椎の圧迫骨折による前方の圧縮により、背中や腰が前方に曲がってきます。

身長が低くなる

脊椎の圧迫骨折による変形により、以前より背丈が縮んだと感じます。

骨折

転んだり、尻もちをついたり、重い物を持ち上げた時など、ちょっとした動作や衝撃で骨折することが有ります。

骨折が生じやすい部位としては、次の3か所が挙げられます。
① 背骨(脊椎の圧迫骨折)
② 手首の骨(橈骨遠位端骨折)
③ 足の付け根の骨(大腿骨頚部骨折)
骨折が生じると、その部分が痛くなり動けなくなります。
また。背中や腰が痛くなった後に、丸くなったり身長が縮んだりします。

疫学

圧倒的に女性に多い病気で、閉経を迎える50歳前後から、骨量が急激に減少します。
女性の骨粗鬆症罹患率は50代で10%、60歳代で30%、70歳代で50%、80歳代で70%となっています。(大腿骨頸部)
大腿骨頚部骨折の発生率は、年齢と共に上昇しますが、患者数は女性が男性の約3倍です。地域別でみると、東北や北関東には少なく、九州、四国、近畿方面に多いため、西高東低の関係にあります。

原因

病態

骨は一度作られたら一生変化しないように見えますが、体の骨は生きており、絶えず新たな骨に生まれ変わるという骨代謝が繰り返されています。
新しい骨を骨芽細胞が作り(骨形成)、古い骨を破骨細胞が壊す(骨吸収)という骨の活動状況のことを、『骨代謝』あるいは『骨の再構築』(リモデリング)と呼びます。このバランスが崩れ、骨吸収側に傾くと、骨密度が低下してゆきます。

原発性骨粗鬆症

閉経や加齢によって起こる骨粗鬆症です。
女性は閉経と共に骨量が減少しますが、これは、女性ホルモン(エストロゲン)が骨の新陳代謝に関わっているからです。
その他、年齢や遺伝的体質、偏食、極端なダイエット、喫煙や過度の飲酒、運動習慣なども原因として考えられており、最近では若い女性の骨粗鬆症が問題になっています。

① 閉経
女性の体の中では、生理が始まると卵巣からエストロゲンと呼ばれる性ホルモンが分泌されます。このホルモンは第二次性徴や、排卵を誘発するなどの働きに関わっていますが、骨代謝においては破骨細胞の働きを抑える働きをしています。
閉経によりエストロゲンの分泌が減少し欠乏すると、破骨細胞が活性化します。
骨吸収が骨形成を上回ることで、骨量の減少が起きてしまいます。

② 加齢
加齢による骨量の減少の理由には、老化によって腸や腎臓の機能が低下することで、カルシウムを吸収する能力なども低下して、骨吸収が骨形成を上回ることが挙げられます。その他に、骨芽細胞の機能が低下したり、筋肉量が減り筋力が低下するなどの原因が考えられます。

③ 遺伝
家族に骨粗鬆症にかかった人がいるなどの、遺伝的素因が原因となることがあります。

④ 生活習慣
カルシウムやビタミンD、ビタミンKなどの摂取不足や、運動不足、喫煙、アルコール過剰摂取などが原因になることもあります。

続発性骨粗鬆症

病気や薬が原因となって発症する骨粗鬆症です。
閉経や加齢以外の理由で起こる骨粗鬆症で、閉経前の女性や、男性が骨粗鬆症を発症した場合はこのタイプの可能性が高くなります。

① 内分泌性
副甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、甲状腺機能亢進症、性腺機能不全などがあります。

② 栄養性
胃切除後、神経性食欲不振症、吸収不全症候群、ビタミンC欠乏症、ビタミンD欠乏症があります。

③ 薬物性
ステロイド薬、抗ケイレン薬、ワルファリン、性ホルモン低下療法治療薬、SSRI、メトトレキセート、ヘパリンなどの薬剤の影響で発症することが有ります。

④ 不動性
全身性(臥床安静、対麻痺、廃用症候群、宇宙旅行)、局所性(骨折後など)が知られています。

⑤ 先天性
骨形成不全症、マルファン症候群があります。

⑥ その他
糖尿病、関節リウマチ、アルコール多飲(依存症)、慢性腎臓病(CKD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの疾患で見られます。

予防&骨を強くする生活習慣

カルシウムを十分摂る

骨を構成するカルシウムの摂取は大切です。
推奨されるカルシウム摂取量は、1日当たり700~800mgで、牛乳やチーズなどの乳製品、豆腐や納豆などの大豆製品、小魚、干しエビ、小松菜、大豆製品に多く含まれています。
サプリメントなどで補う場合、カルシウムの過剰摂取は高カルシウム血症や高カルシウム尿症、尿路結石などを引き起こす恐れがあるので注意しましょう。

ビタミンDを摂る

ビタミンDはイワシやサケなどの魚類、干しシイタケやキクラゲなどのキノコ類や卵に多く含まれています。

ビタミンKを摂る

納豆、ホウレンソウ、小松菜、ニラ、ブロッコリー、サニーレタス、キャベツに多く含まれています。

禁煙、アルコールは控えめに

喫煙は避け、カフェインを含む食品(コーヒーや紅茶)やアルコールなどを過剰に摂取することは控えましょう。

運動、日光浴をする

ビタミンDは紫外線に当たることによって体内で産生されますので、適度な日光浴が骨の健康に有効です。
強い直射日光を長時間浴びることは皮膚のダメージにつながりますが、15分間程度の日光浴は骨の健康に役立ちます。
冬であれば、30~60分程度の散歩に出かけたり、夏であれば暑さを避けて30分程度木陰で過ごすだけでも十分です。

適度な体形

やせ過ぎは骨に負担がかからなくなり骨密度の低下を招き、肥満も糖尿病など 続発性骨粗鬆症のリスクが高まりますので、適切なエネルギー摂取を心がけることは骨粗鬆症の予防につながります。

適切な運動

骨は負荷がかかることで強くなるため、運動して骨量(骨密度)の上昇を目指します。
散歩を日課にしたり、階段の上り下りを取り入れるなど日常生活の中でできるだけ運動を取り入れる工夫が大事です。
骨折予防に有効な運動とされているのは、ジョギング、ダンス、ジャンプ運動などで、骨にかかる負荷がある程度強い運動です。
また、筋肉運動は骨に刺激を与え、また、バランス感覚を維持して転倒を防止する上で重要なので、背筋運動などの筋力トレーニングも行うと良いでしょう。
これらの運動・トレーニングは一時的ではなく、継続して取り組むことが重要です。

転倒防止

転倒すると、背骨(脊椎)が圧迫変形したり、骨折などの事態になりやすいので、杖などをついて歩くとともに、つかまるものを意識して移動しましょう。

薬物治療

治療の目的

骨強度を高めて骨折を防ぎ、QOL(生活の質)を保つことです。

骨粗鬆症治療薬の分類

① 骨吸収を抑制する薬
骨吸収が緩やかになると、骨密度の高い骨ができてきます。
エストロゲン製剤、ビスホスホネート製剤、SERM製剤、カルシトニン製剤、抗RANKL抗体が有ります。

② 骨の形成を促進する薬
活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK製剤、副甲状腺ホルモン製剤が有ります。

③ 骨の代謝を調整する薬
ビタミンK2製剤、カルシウム製剤が有ります。

骨粗鬆症治療薬の特徴

① ビスフォスフォネート製剤
骨粗鬆症に対し、現在最も使用される薬剤です。骨を破壊する細胞を抑える働きがあり、破骨と再生のバランスを整えます。服用時には注意すべき点が多く、服用後30分臥床を避け、飲食も服用後30分は制限されます。食道に薬が長く留まると食道炎や食道潰瘍を生じますので、十分量の水で服用する必要があります。

② ビタミンD製剤
肝蔵、腎臓で活性化されて骨代謝に関与します。
活性化したビタミンDはCa吸収促進や破骨細胞抑制などの作用を示します。
副作用としては高Ca血症、急性腎障害、尿路結石などが有ります。

④ 活性型ビタミンD3製剤
小腸ではカルシウム、リンの吸収を促し、副甲状腺に作用して副甲状腺ホルモンの合成・分泌を抑制します。

③ SERM(ラロキシフェン塩酸塩)
エストロゲン(女性ホルモン)は骨吸収を抑制しますが、SERMは骨へ選択的にエストロゲン作用を示します。同時に乳がんや子宮体がんのリスク上昇を抑制します。
副作用としては静脈血栓症や更年期症状などがあります。

④ 抗RANKLモノクロナール抗体
骨の吸収に関わる破骨細胞分化因子であるRANKLを標的とした分子標的治療薬です。
(Receptor  Activator  of  Nuclear  factor-koppa B Ligand 膜貫通タンパク質)
半年に1回皮下注射を行います。
副作用としては低Ca血症、顎骨壊死などがあります。

デノスマブ=プラリア 半年1回 皮下注
 副作用 低Ca血症 顎骨壊死
 デスマノブは破骨細胞分化因子であるRANKLを標的とする分子標的治療薬です。

テリパラチド=テリボン(週1回24ヶ月)、フォルテオ(毎日1回24ヶ月)

ロモソズマブ=イベニテイ 月1回 皮下注 12回
 ロモソズマブは骨形成を抑制するスクレロスチンを標的とする分子標的治療薬です。

⑤ PTH製剤(副甲状腺ホルモン製剤)
骨芽細胞を活性化させて、骨強度を高めます。
1日1回自己注射もしくは週1回皮下注射します。
投与可能期間は生涯で合計24ヶ月までです。
副作用としては悪心、嘔吐、頭痛、脱力感があります。

⑥ 抗スクレロスチン抗体
ヒト化抗スクレロスチンモノクロナール抗体製剤で、スクレロスチンを標的とする分子標的治療薬です。
骨の代謝に関わるスクレロスチンを阻害し、骨吸収を抑制し、骨形成を促進します。
1ヶ月に1回皮下注射します。投与期間は12か月です。
副作用として低Ca血症、顎骨壊死、心血管系事象(虚血性心疾患、脳血管障害)があります。

薬物療法の実際

閉経後骨粗鬆症に対する治療薬の選択にはコンセンサスの得られた治療法はいまだ確立されてはいません。

① 開始時
カルシウム薬あるいは活性型ビタミンD3製剤が用いられます。

② 閉経後早期のホットフラッシュが有る時
ホルモン補充療法(HRT)の追加・切り替えを行います。

③ ホットフラッシュが治まったら
骨折発症前まではHRTの継続あるいは、SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)製剤を用います。

④ 低骨密度症例では
抗RANKLモノクローナル抗体、あるいはビスホスホネート製剤を使用します。

⑤ 低骨密度・骨折発症後では
ビスホスホネート製剤や、骨形成促進剤であるPTH製剤(副甲状腺ホルモン製剤)を用います。PTH製剤は骨密度増加効果は高いものの、第一選択薬ではなく、他の薬剤で骨折を起こした症例、多発骨折症例、あるいは著しく骨密度が低い症例などに用います。

骨折リスクに応じた薬剤選択:骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン

① 骨折リスクが低い例(若年で骨折の既往が無い)
SERM(女性のみ)あるいは活性型ビタミンD製剤(エルデカルシトール)が用いられます。

② 骨折リスクが高い例(高齢で骨折が一箇所程度ある)
BP(ビスフォスフォネート製剤)、抗RANKLモノクロナール抗体(デノスマブ)が用いられます。

③ 骨折リスクがきわめて高い例(高齢~超高齢で骨折も多数ありうる)
PTH製剤(副甲状腺ホルモン剤:テリパラチド)、あるいは抗スクレロスチン抗体(ロC240:J346ブ)が用いられます。

ビタミンDと骨粗鬆症

ビタミンDの種類

ビタミンDにはD2からD7の6種類が有ります。D1は発見された後で、不純物であったことがわかったため、存在しません。D4~D7は食品には殆ど含まれておらず、活性も低いため、一般的には高い生理活性を示すビタミンD2(エルゴカルシフェロール)と、ビタミンD3(コレカルシフェロール)の2つに大別されます。
ビタミンD2は植物由来でキノコ、海藻類に含まれ、D3は動物由来で、魚肉、肝臓、卵、ヒトの皮膚に含まれます。
ヒトの皮膚に存在するプロビタミンD3は、紫外線に当たると、ビタミンD3へと変化します。
ヒトの生理的な効力面ではビタミンD2とD3は、ほぼ同等な効力を持っています。

活性型ビタミンD

食べ物や皮膚で作られたビタミンDは、肝臓や腎臓で代謝され、活性化型ビタミンDになります。
活性型ビタミンDは、腸管からのカルシウムの吸収を高め、骨の石灰化を促進し、骨密度を増加させる働きを持ちます。その結果、骨折の予防と抑制へとつながります。

ビタミンD欠乏

日本人の8割でビタミンDは不足しており、4割は欠乏していると言われています。
ビタミンDが不足すると血中カルシウム濃度を維持するために、副甲状腺ホルモンが増加し、骨からカルシウムを放出して血中カルシウム濃度を維持しようと働きます。
ビタミンDは、肝臓、腎臓で代謝されて、活性型ビタミンDとなりますが、現在医薬品として処方されているのはこの活性型のものです。
ビタミンDの7~8割は皮膚に紫外線が当たる事で、皮膚で生成されます。
ビタミンDにはサプリメントなどの天然型ビタミンDと、医療処方薬である活性型ビタミンDがあります。天然型ビタミンDは骨折の予防などにはあまり効果がありません。

ビタミンDの充足度

25(OH)Dを測定し、30ng/ml以上ならビタミンDは充足しており、20~30であれば不足、20以下であれば欠乏と判定します。

日光とビタミンD

ヒトの皮膚の下にある皮下脂肪には、ビタミンDの基になるコレステロールの一種である7ーデヒドロコレステロールがあり、皮膚からの紫外線による光化学反応によりビタミンDが作られます。
よって健康人が適度な日光のもとで通常の生活をしている場合はビタミンDが不足することは少ないと考えられていますが、高齢者では、皮膚におけるビタミンD生産能力が低下することに加え、屋外での活動量減少により、日光照射を受ける機会が減少する場合があります。

ビタミンD欠乏

ビタミンDが欠乏すると、腸管からのカルシウム吸収の低下と、腎臓でのカルシウム再吸収が低下し、カルシウムが不足し、低カルシウム血症となります。その結果骨の軟化が起こり易くなります。

ビタミンD不足と副甲状腺ホルモン

血中ビタミンD濃度が低下する、あるいはカルシウム濃度が低下すると、副甲状腺ホルモンが分泌され、小腸からのカルシウム吸収促進、腎臓からのカルシウムの再吸収、骨からのカルシウム放出を行い、血中カルシウム濃度を上昇させる方向に働きます。

高齢者とビタミンD

高齢者では腸管からのカルシウム吸収能が低下していること、腎におけるビタミンD活性化能が低下していること、二次的に副甲状腺ホルモンの分泌が高まり、骨吸収が亢進している例があることと、これらの代謝異常が活性化型ビタミンD3製剤の投与により改善する。