耳硬化症

耳硬化症とは

耳硬化症はアブミ骨と内耳との間が硬くなる病気です。
アブミ骨の振動が傷害されるために難聴が起きます。
初期には、伝音難聴(音がうまく伝わらない)を呈し、徐々に進行します。
手術で劇的な聴力改善が期待できます。

疫学

白人の方がアジア人に比べ、圧倒的に多い病気です。
白人は家族性に出やすい一方、
日本人では孤発性の形をとることが多い傾向です。
白人では多くの場合、遺伝的素因が関係しているものと思われます。
発症は思春期~20代くらいが多く、徐々に難聴が進行してゆき、40歳頃には症状もはっきりしてきます。両側性難聴が徐々に進行します。
男女差で見ると、女性が男性の2~3倍の罹患率を示します。
女性は妊娠、出産を境に増悪するケースが度々見られます。
日本人の全耳疾患の1%程度を占めています。

有名人

ベートーベンも耳硬化症で全く耳が聞こえなくなったといわれています。
白色人種では主要な難聴あるいは失聴原因の1つです。

原因

女性に多く、親兄弟での家族歴もみられることから、遺伝素因やホルモンが関係しているとも考えられていますが、根本は骨代謝の問題と言われています。
多くの症例で、発症時は内耳側は基本的には問題は無く、進行すると、内耳にも問題が生じてくることがあります。

機序

鼓膜と内耳は耳小骨と呼ばれる3個の骨で連結されており、音が伝わります。
並び方は、鼓膜~つち骨~きぬた骨~あぶみ骨~内耳という順番です。
あぶみ骨と内耳のところは普通は緩やかでそこが揺れ動くと、振動が伝わりますが、あぶみ骨が変性を起こし、内耳との間が硬くなると振動が伝わりにくくなり難聴になります。
最初は、限局性・進行性の骨増殖によりアブミ骨の可動性が損なわれ、伝音難聴が発症しますが、さらに、内耳周囲の骨の変化が進むと、内耳機能が低下し、感音難聴に発展する可能性もあります。

症状

  1. 難聴: ほとんど100%の患者に難聴がみられます。
  2. 耳鳴: 約7割の患者にみられます。
  3. 耳閉感: 約3割の患者にみられます。
  4. めまい: 障害が内耳に波及するとみられます。約1割の患者にみられます。
  5. 多くは両側性に生じます。
  6. 鼓膜は正常で、耳漏も有りません。

検査

  1. 聴力検査: 難聴の程度と、伝音性難聴、感音性難聴の程度を調べます。
  2. CT検査: 側頭骨CT検査で、内耳骨包の脱灰像所見が見られます。
  3. ティンパノグラム: 特有なパターンを示します。(通常A型もしくはAs型)

診断

一般的な診察手順としては、臨床経過、聴覚検査所見等から診察しますが、側頭骨CTで特徴的所見があれば、ほぼ確定します。

鑑別診断

鑑別疾患
伝音難聴であるものは全て、鑑別疾患となりえます。
代表的なものは、滲出性中耳炎、慢性中耳炎、穿孔性中耳炎、鼓室硬化症などがあります。
長い期間中耳炎を繰り返していると、つち骨やきぬた骨自体も動きが悪くなってきて、耳小骨の関節自体が硬くなり、音が伝わりづらくなるのが鼓室硬化症です。

治療法

治療法

① 手術

耳硬化症の治療の基本は手術(アブミ骨手術)で、第一選択とされています。
耳硬化症ではアブミ骨がうまく動かないために難聴が生じるので、固着したアブミ骨を摘出し、新しいアブミ骨(人工骨)と取り替える手術を行います。
手術後は音が伝わる順番は、鼓膜~つち骨~きぬた骨~人工の耳小骨~内耳となります。
手術効果はほぼ全例に成功が見込めます。聴力は気骨導差がなくなり、内耳が持っている力と同等になります。すなわち、気導値が正常であれば、ほぼ聴力は正常に戻るというような効果がでるため、難聴が劇的に良くなり患者には喜ばれる手術です。
手術の副作用としてはめまいがありますが、一般的には、生じためまいは時間とともに消失していきます。

② 保存療法

難聴の程度や年齢、全身状態を考慮して補聴器を選択することもあります。

③ 薬物療法

有効な薬物療法はありません。