左右の鼻腔の間には、鼻中隔という骨と軟骨からできている仕切り板が有ります。
この骨と軟骨が左右どちらかに曲がったり、S字状に変形している状態を鼻中隔湾曲といいます。
鼻中隔の湾曲自体は、学童期の小学生の約70%にみられ、成人では約90%に見られます。
そのうち湾曲が強い場合は鼻がつまる、においが判らない、いびきがひどいなど色々な症状が出てきます。
湾曲している部分の形態によっては、鼻出血や慢性副鼻腔炎の原因になったり、アレルギー性鼻炎の症状が強くなったりします。
少ししか曲がっていない場合は、自覚症状は認めない場合が多いようです。
最も多い症状です。鼻中隔が片方に突き出ていると、突き出ている側の鼻腔がよく詰まります。
鼻中隔が曲がって突き出ている部分の粘膜は薄く引き伸ばされているため傷つきやすく、さらに曲がった部分に空気が当たって乾燥するため、鼻出血が起こりやすくなります。
もともと狭くなっている鼻腔がアレルギー性鼻炎による粘膜の腫れでさらに狭まってしまいます。
鼻腔が狭いと鼻腔の通気性が失われ、細菌が繁殖しやすい環境になり副鼻腔炎になりやすい状態となります。
鼻呼吸できずに口呼吸を繰り返すと呼吸が浅くなって脳が必要とする酸素が不足し、頭痛、吐き気を誘発します。
ひどいイビキ、しつこいくクシャミ、味覚障害、臭覚障害、中耳炎などが有ります。
外見からはほとんど曲がっていないように見えても、検査してみるとほとんどの方は曲がっています。
曲がり方で分類すると、曲がる位置で「上方型」「下方型」形状で「K字湾曲」「L字湾曲」「S字湾曲」「C字湾曲」などが有ります。
鼻中隔は、鼻中隔軟骨、し骨正中板、じょ骨という軟骨及び骨で構成されていますが、一般に骨の板よりも軟骨の板の方が発育が盛んなので、成長過程で発育スピードの相違により、軟骨部に湾曲が起こりやすくなります。
成長と共に曲がってゆくため、幼児での湾曲は少数です。
顔面の受傷で鼻中隔を損傷することがあります。
出産の際に赤ちゃんの鼻に対して力が加わることで鼻中隔が曲がることが有ります。
鼻鏡や内視鏡により、鼻腔内を観察します。ほとんどの場合、内腔観察で診断できます。
鼻中隔の湾曲の位置、程度を調べます。
湾曲の位置、程度をより正確に検査できます。同時に、副鼻腔炎の合併の有無も確認できます。
機械を鼻に当て、鼻呼吸して空気の通り具合を検査します。
症状と、各種検査を組み合わせ、総合的に判断します。
日常生活に問題なければ多少曲がっていても問題ありません。
症状が軽い場合には、対症療法となります。
曲がっている部分の鼻中隔軟骨を切除して、真っすぐな部分だけに整え、それを戻す手術です。
以下のような場合は、手術が考慮されます。
などです。
鼻中隔は思春期までは盛んに発育しますので、思春期前に手術すると、発育が不十分となり、鼻の変形を起こす心配が有ります。
通常は、17~18歳以降に行われます。