生後4か月から2歳位までの乳児がかかる、高熱と解熱後の発疹を特徴とするウイルス感染症です。1910年に初めてこの疾患が文献に記載されましたが、以来、原因ウイルスは長い間不明でした。
1988年に山西先生らによりヒトヘルペスウイルス6型であることが証明され、さらに1990年にはヒトヘルペスウイルス7型も原因ウイルスとなりうることが明らかとなりました。
感染症法に基づく4類感染症定点把握疾患に定められており、全国の発生状況が判るようになっています。この小児科定点あたりの報告数では、毎週の発生数や月の発生数はほぼ一定しており季節性もなく、流行は見られません。
また、年次による増減もほとんど無い状況です。
血清免疫学調査により、2~3歳頃までにほとんどの小児が抗体陽性になることが判明しています。感染しているにもかかわらず、明らかな症状が発現しない不顕性感染は20~40%存在するとされます。
突発性発疹は生涯に1度罹患するとされますが、ヒトヘルペスウイルス7型感染により2度目の突発性発疹を経験することもあります。
ウイルスは生涯体内に生き残っており、感染力を持ち続けます。したがって、主たる感染経路は唾液中に含まれるウイルスからの感染と考えられます。
唾液中に排泄されたウイルスが経口的にあるいは経気道的に乳児に感染します。
感染したことのある乳児や3~5歳の幼児の唾液中には高い頻度でウイルスが含まれており、また、感染したことのある大人の唾液にも時折ウイルスが含まれることが有り、いずれも感染源になりうると推測されています。
好発年齢は6か月~12か月の乳児ですが、ヒトヘルペスウイルス6型は、生後6か月~12か月の乳児に多く、7型は1歳~2歳に多いという特徴が有ります。
4か月未満の乳児は母からの移行抗体のためほとんど感染しません。
子供が生まれて初めてかかる病気の代表格です。
潜伏期間は約10日間です。初発症状は熱発で、生まれて初めての高熱で発症する事が多く、38~40度の熱が3日間ほど続いた後、解熱とともに、2~10mmくらいの、淡い紅色の米粒大の発疹が、腹部を中心に出現し、次第に胸、背中、顔面、手足など全身に広がってゆきます。発疹は1~数日で消失し、色素沈着を残すことは有りません。発疹に痒みは無く、また、痛みも有りません。
発熱時は多少下痢気味になることが有りますが、その他の症状はあまり見られません。発熱中は、熱のわりには比較的機嫌も良く、食欲もさほど落ちません。
しかし、熱が下がり発疹が出る頃になると一転して不機嫌になることが良くあります。原因は解っていませんが、ほとんどは発疹が治まると共に、機嫌も戻ります。
乳児によってはリンパ節腫脹、眼瞼浮腫、大泉門膨隆が見られますが、多くは発熱と発疹のみで経過します。発熱初期に熱性けいれんを合併することが有りますが、一般に予後は良好です。ケイレンは通常38℃以上の発熱で、急に熱が上がるタイミングで起こります。通常5~10分でケイレンは治まりますが、それ以上たっても治まる気配が無い場合は、救急車を要請しましょう。
年齢と、その特徴的な臨床経過すなわち、3日ほどの高熱が解熱するとともに、発疹が出現することにより、診断されることがほとんどで、診断自体は困難ではありません。
より確実な診断法として、血清診断、PCR法によるウイルスDNA検出などが有りますが、いずれも保険適応は認められていません。
一般に予後は良好な病気です。
10~15%に熱性けいれんが生じますが、ほとんど5~10分以内におさまり後遺症を残しません。
稀に、脳炎、脳症、劇症肝炎、血小板減少性紫斑病、心筋炎、血球貪食症候群などの重篤な合併症を引き起こすことがあります。
特別な予防法は無く、予防接種も実用化されていません。
通常、予後良好な疾患であり、対症療法で経過観察するのみなので、特に予防が問題となる事はありません。
特効薬はなく、症状に応じた薬の処方となります。
熱が高くて機嫌が悪ければ解熱剤が処方されますが、発疹に対して塗り薬は不要です。
予後良好な疾患であり、経過観察のみにて対処しうることがほとんどです。
高熱や食欲不振で脱水症状にならないよう、水分補給はしっかりしましょう。
通常、時間が経過すれば自然治癒します。
重篤な合併症を呈したり、移植患者や、AIDS患者のように免疫抑制下にある患者において発症した場合には、抗ウイルス薬の使用を検討されることも有ります。
厚生労働省のガイドラインでは子供の登園の目安は『解熱し機嫌が良く全身状態が良いこと』 とされています。
患者本人の状況が改善すれば行って構いません。