ウイルス感染により発症する、口の中や周り、手のひら、足底の発疹を特徴とする病気です。
ヘルパンギーナやプール熱と共に、小児の三大夏風邪の一つに挙げられています。
いくつかの原因ウイルスがありますが、最も多いのはコクサッキーA16で、エンテロウイルスも原因となります。いずれのウイルスも症状はほとんど同じです。
一般に6~8月に流行することが多い病気ですが、秋から冬にかけて多少の発生が見られることもあります。数年おきに大きな流行の年を迎え、新聞をにぎわせます。
ヘルパンギーナは手足口病の原因ウイルスの近縁種であるコクサッキーA群やコクサッキーB群あるいはエコーウイルスで発症し、手足口病と流行時期、症状が似ています。手足口病の発疹は手、足、口腔内に発生しますがヘルパンギーナは口腔内のみです。また、手足口病は患者の3分の1程度が発熱し、その中でも高熱の出現は少ないのですが、ヘルパンギーナは38~40度の高熱が見られるという違いがあります。
主たる感染経路は飛沫感染で、唾液や気道分泌物の咳やくしゃみによる空気中への放出で感染してゆきます。
患者に触ることによる接触感染もあります。ウイルスが付いている手で口や鼻を触れると感染します。
便にもウイルスが排出されますのでおむつ交換後の手洗い消毒が大切です。
患者から排出されたウイルスが食べ物や飲み物に入り、それらを口にすることでウイルスが体内に入り、腸で感染します。
感染力は急性期が最も強く、症状回復後も2~4週間、便からウイルス排泄が続くので感染源となりえます。
好発年齢は、5歳までの幼児で、その中でも、2歳以下が半数以上を占めます。
学童でも流行が見られることが知られています。
抗体をもたない場合、大人も感染することが有りますが、いったん発症すると、重症化し易いので注意が必要です。
潜伏期間は2~4日です。
初発症状として、発熱が一番初期に見られますが、実際に発熱が見られるのは患者の1/3 程度です。
高熱が続くことは通常ありません。
口腔粘膜から順次、手のひら、手甲、足底、足背、臀部、股関節に水疱性発疹が出現します。
発疹の特徴としては四肢末端部に出現する、2~3mmの赤色の水疱性発疹です。
水疱の後がカサブタになることはありません。
口腔粘膜の発赤は、手足の発疹に先行することが多いようです。
手足口病を発症するウイルスの種類が数多く存在することから、何度も感染発症してしまうことが有ります。
成人発症の場合、子供より症状が重くなります。発疹の痛みが強く、足底痛で歩行困難になることもあります。
他に、全身倦怠感、悪寒、関節痛、筋肉痛などの症状を伴います。
口腔の発疹がひどいと食思不振に陥り、体力が衰弱することもあります。
水疱性発疹の性状、分布が重要で、季節、年齢、流行状況を考慮して診断されます。
血清学的診断は補助的なもので、手足口病の場合、臨床から比較的容易に判断し易いことから、原因ウイルスの鑑定まで行う必要は無いと、考えられています。
基本的には予後良好な病気で、合併症の出現は稀ですが、高熱の持続、悪心、嘔吐、頭痛などが見られたら医療機関を受診しましょう。
髄膜炎、小脳失調症、脳炎を引き起こすケースが知られています。
心筋炎、神経原性肺水腫、急性弛緩性麻痺などがあります。
生活上の予防として、基本的には飛沫感染ですから、うがい、手洗い、マスクが有効です。
回復後も口から1~2週間、便から2~4週間にわたりウイルスが排出されますので、おむつ交換後の手洗い消毒が大事です。
未だ開発されていません。
特効薬はなく、経過観察を含め、症状に応じた治療となります。
口内炎による口腔内の痛みがある場合はのど越しの良い飲食物がお勧めです。
通常1週間程度で自然治癒します。
手足口病の治療を目的とした市販薬は発売されていません。
学校保健安全法による規定はありません。
患者本人の状況が改善すれば行って構わないとされています。
主症状から回復後も長期(2~4週間)にわたりウイルスが排泄されるので、登園登校停止をしても、厳密な意味での流行阻止効果は期待できないことが理由です。