滲出性中耳炎

滲出性中耳炎とは

鼓膜の内側に在る、中耳腔という骨で囲まれた空間の中に、浸出液という液体が溜まる病気を指し、文字どうり中耳炎の一種です。

機序としては、中耳の粘膜の炎症と耳管の働きの低下が有ると粘膜からしみ出た浸出液の吸収、排泄が上手くゆかず、中耳腔に液体が溜まるようになると考えられています。

中耳炎の中でも、急性中耳炎は急性発症した中耳の感染症で、耳痛、発熱、耳漏を伴うことが有ります。

一方、滲出性中耳炎ではこれら急性感染症の所見や症状は無く、痛みや発熱を伴いません。

急性中耳炎発症後に相応の期間、遷延した中耳貯留液が見られることが有りますが、これも滲出性中耳炎の範疇に入るとされています。

好発年齢として3歳から10歳頃までに多く、特に5歳以下の子供に頻繁に見られます。就学前児童の約90%が一度は経験します。

子供は大人に比べ、耳管が太く短い上に、耳から喉までの傾斜が緩やか(水平に近い)なので細菌やウイルスが侵入しやすく中耳炎になりやすい傾向が有ります。


症状

急性症状は無く、強い痛みや発熱は有りません。

難聴が唯一の症状であることも多く、難聴の程度も軽い場合が多いので気づくのが遅れてしまうこともよくあります。

小児では日常生活で、テレビのボリュームが高い、呼んでも返事をしない、大きな声でしゃべる、電話でおしゃべりができない等で気づかれます。

子供の難聴の原因で一番多いのが滲出性中耳炎ですが、幼児は自分から症状を訴えることは少ないのでなかなか見つからないことも有ります。

大人では難聴を訴え、耳に栓をしているような詰まった、あるいは水が入った感じなどと表現します。耳鳴や自分の声が響いて強く聞こえることも有ります。


原因

一番多い原因は急性中耳炎が十分に治りきらずに、鼓膜の内側に膿が浸出液となり残ってしまい滲出性中耳炎となるケースです。

通常、中耳炎の膿は中耳の粘膜から吸収されたり、中耳と鼻の奥をつないでいる耳管を通って、のどの方に排出されますが、鼻の病気(アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎など)や、喉に慢性の炎症が有ったり、アデノイドが大きい場合では耳管の働きが悪くなり、滲出性中耳炎が形成され易くなります。


予防

一般的には鼻や喉に炎症を起こさないように、全身的な健康管理が大切です。もし、風邪をひいてしまったら、できるだけ早く治して、咳や鼻水を長引かせないことです。急性中耳炎にかかってしまったなら、炎症を反復させず、生じた急性中耳炎をその都度しっかり治すことが重要です。

慢性副鼻腔炎やアレルギー性疾患などの存在は滲出性中耳炎の発生頻度を増加させますのでしっかりと治療しコントロールすることが大事です。


検査

耳鏡、手術用顕微鏡:  

鼓膜をとおして中耳に溜まった液の有無、炎症の状況などを観察します。


聴力検査:  

難聴の程度、タイプを調べます。


ティンパノメトリー:  

鼓膜の動きを調べる検査で、グラフの形でA型、B型、C型に分類されます。A型は正常、B型は滲出性中耳炎や癒着性中耳炎、C型は耳管狭窄症や滲出性中耳炎で見られます。


診断

鼓膜を通して中耳に溜まった液体を確認できることも有りますが、一般的診断方法としては、耳腔内、鼓膜の観察、聴力検査、ティンパノメトリ―を適宜組合わせて診断します。


治療法

鼻・喉の治療: 

滲出性中耳炎を起こし易くしている鼻やのどの原因疾患を治さないと再発を繰り返します。特に子供では慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、咽頭炎、喘息などの病気を同時に抱えていることが多く、耳管や中耳に悪影響を与えていることが多々有ります。これらを改善、治療することは、滲出性中耳炎の治療の解決につながる大切なことです。


内服治療:  

慢性副鼻腔炎が持続している場合には、マクロライド系抗生物質の少量持続投与が行われます。その他、気道粘膜調整作用、粘膜正常化作用のある薬も併用します。


耳管通気:  

鼻から耳に空気を送り込みます。


鼓膜切開術:  

聞こえの状態がかなり悪い場合は、とりあえず鼓膜を少し切って中に溜まっている浸出液を吸い出す作業をします。切開の穴は通常数日で塞がってしまいますが、中耳の風通しが一時的に良くなり、中耳粘膜の状況が改善します。


鼓膜にチューブ:  

滲出性中耳炎を繰り返す場合は、鼓膜にチューブを入れる手術を行います。薬や処置でよくならない重症の滲出性中耳炎に行われます。方法は鼓膜切開術と同じで、鼓膜下部を切開して貯留液を吸い出してからチューブを入れますが、場合によっては入院して全身麻酔で行うこともあります。(外来でも可能なケースもあります)

多くの場合チューブは自然に抜けますが、取れない場合は治り具合を診ながら抜くこともあります。留置で生じたチューブの穴はほとんど自然に塞がります。